日米VCの動向比較と、今後の展望におけるVCの役割
日本のVCにおけるエグジットは、おおよそIPOが8割、M&Aが2割です。IPOの場合、10億~100億円規模での上場が主流となっています。しかし米国では逆で、IPOが2割、M&Aが8割です。米国では、IPO段階では売却せずに追加投資を行い、さらに成長させ1000億円規模でM&Aによりエグジットすることが多々あります。
投資額そのものでも大きな差があります。2018年の日本におけるVCやCVC、事業会社によるスタートアップへの投資額は約3800億円ですが、米国のスタートアップへの投資額は約13兆円で日本の34倍となります。また2016年のファンドレイズでは、日本が2763億円に対し、米国は4.6兆円と約17倍になっています。投資領域に関しては、日米ともにIT関連が50%、ついでバイオ/ヘルスケアが約20%となっています。
米国のVCについて、改めて振り返ってみましょう。その起源は、1920年代から1930年代にまで遡ります。当時は、裕福な個人がEastern AirlinesやXeroxなどのような会社に直接投資をしていた時期でした。その後、1946年に初めて組織的に設立されたVCが誕生しています。誕生の背景としては、何かしら潜在的な技術がありそれを開発できる優秀な技術者も集まっているにも関わらず、開発を続ける資金がないという状況がシリコンバレー付近で頻繁に発生していたことにあります。その後VCが現在の形とほぼ同じような業態に定着したのは1970年代と言われており、2000年代に入ってなお発展を続けています。2017年においては、年間を通じて約720億ドル(約8兆円)の投資がVCによって行われたといわれています。
実例として、アンドリーセン・ホロウィッツというVCを例として挙げてみます。ネットスケープを創業しネット界の天才と呼ばれたマーク・アンドリーセンと、ラウドクラウドやオプスウエアなどの会社の設立から経営までを行ってきたベン・ホロウィッツの2人がパートナーとして2009年に設立した、現在の米国を代表するVCです。2009年にSkypeに投資をし、2011年には8億ドルをTwitterに、その他Airbnbなどにも投資を実行し、多額のリターンを実現しています。
またペイパルの創業者でもあるピーター・ティールは2002年にペイパルをeBayに売却したのを機に、ヘッジファンドのクラリウム・キャピタル(Clarium Capital)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)、バラ―・ベンチャーズ(Valar Ventures)、ミスリル・キャピタル(Mithril Capital)など、数々のVCを設立し、フェイスブック(Facebook)へ50万ドル(約5500万円)投資し約10億ドル(約1100億円)のキャピタルゲインを得たと言われています。
厳密な意味でVC投資ではありませんが、上記のフェイスブックによるインスタグラム(Instagram)への投資は最も成功した事例かもしれません。フェイスブックは2012年にインスタグラムを10億ドル(約1100億円)で買収しています。その当時インスタグラムはごく簡単な写真加工アプリに過ぎず、使用できるデバイスもiPhoneのみでしたが、その後6年経った2018年現在において、ブルームバーグのレポートによるとインスタグラム単体の評価額は1000億ドル(約11兆円)と推定されており、買収額の100倍にまで成長しています。親会社のフェイスブックを上回るペースでの利用者数の伸びなどが見られ、ベンチャー企業の歴史的成功例としてみることができるかもしれません。
米国はVCが誕生した場であり、現代でもベンチャーキャピタリストの中心的な活躍の場にもなっています。米国という起業家精神(アントレプレナーシップ)の根づいた社会、そして多民族により構成されており移民が多いために野心的な人も多いというような背景から、VCは米国社会に深く根付いているのだと思います。様々な障壁もありますが、成功すればハイリターンを得られるという、まさしくアメリカンドリームを体現した事業形態なのです。
歴史的にも投資額的にも厚みのある米国と比較するとまだ規模が小さい日本ですが、人工知能やIoTがもたらす第四次産業革命の真っ只中、上場企業も自社ビジネスと親和性のある領域で人工知能やAIを用いた新規事業を開発するため、近年コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の設立が相次いでいます。
IoT、人口知能、Saas領域のスタートアップも増え、そこへVCの資本が入り、起業と世の中の変化が加速しています。このような状況の中、スタートアップにリスクマネーを供給するVCの役割はとても重要で、VC業界の成長が日本の将来を左右すると言っても過言ではありません。
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監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。 コンサル業界・金融業界への転職に役立つ情報を発信しています。 |