シンクタンクの仕事
シンクタンクとは単純化すれば「さまざまな分野の専門家を集めて、調査研究・分析・提言・システム開発などを行う組織」であると言えます。需要に応じて対応領域も国際情勢・金融・環境・エネルギー・インフラ・農業など多様化しており、クライアントも政府や自治体などから一般企業までさまざまです。
シンクタンクとは、think(考える)とtank(液体やガスなどを蓄える容器)とを組み合わせた言葉で、意訳すれば「頭脳集団」とでもなるでしょうか。大別すると内閣府の経済社会総合研究所や外務省の日本国際問題研究所といった「政府系シンクタンク」と、野村総研や日本総研といった「民間シンクタンク」の2つに分けることができます。
コンサルティングファームが「クライアントが抱える問題を解決する」のをミッションとするのに対し、シンクタンクは「調査・研究・分析などを行う」ことを主な目的としているとイメージされますが、現在ではこの垣根は非常にあいまいになっており、特に大手シンクタンクでは企業経営全般に対するコンサルティングサービスの提供が事業の大きな軸となっています。
シンクタンクの業務で特徴的なのがデータ収集および分析といった研究業務ですが、これは「自主研究」と「受託研究」に分かれます。ウエイトが大きいのは後者です。クライアントから委託を受けて研究を行い、その結果を報告するという業務で、依頼されたテーマについてリサーチを行い、場合によってはインタビューなどのフィールドワークによって直接データを収集します。
このデータ収集と分析を繰り返しながら、クライアントに「最終報告」をするのが業務の主な流れです。基本的には書面による報告となるので、プレゼン資料を作成するというよりは、論文を書くような感覚に近いかもしれません。
国内シンクタンクの代表といえるのが、1965年に設立された「野村総合研究所」です。野村證券のアナリスト部門が独立した旧・野村総研と、野村證券の電子計算部が合併して生まれた企業で、金融機関向けシステム開発やコンサルティングに絶大な強みを持っています。三井住友フィナンシャルグループ傘下の「日本総合研究所」、MUFG傘下の「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」などもあり、日本のシンクタンクには金融機関を母体とする組織が比較的多い傾向にあります。その一方で「NTTデータ経営研究所」のような情報サービス企業発の組織や、「富士通総研」のようなメーカー系なども存在感を示しています。
海外におけるシンクタンクに目を向けてみると、まず筆頭に挙げられるのがアメリカ・ワシントンDCにある「ブルッキングス研究所」です。世界ランキングのトップに君臨する最大手のシンクタンクで、アメリカの政策議論にも少なからぬ影響力を持ち、政権中枢に携わる多くの人材を輩出しています。そのブルッキングス研究所と双璧をなすのが、イギリス・ロンドンにある「王立国際問題研究所」(通称:チャタムハウス)です。1920年創設の世界的シンクタンクのひとつで、政治・軍事・外交・メディアなど、さまざまな分野において強い影響力を持っています。
先ほど頭脳集団と意訳しましたが、シンクタンクは地道な調査研究をベースに社会・産業の今後を展望し、政策立案や企業経営に関する提言を行う“ブレーン”として、クライアントにとって極めて重要なソリューションを提供しています。政府が作る新しい法律や条例の内容を左右する可能性があるという意味では、公共社会への貢献度も極めて高い仕事といえるかもしれません。