
慶應義塾大学経済学部を卒業後、三菱商事に入社。10年間の在籍中に機能性食品素材、プラスチックなどへの事業投資、メーカー経営、ターンアラウンドに従事。2004年からハーバード・ビジネス・スクールに留学しMBAを取得、2006年からカーライルに参画。これまでコバレントマテリアル株式会社(現クアーズテック株式会社)、株式会社ツバキ・ナカシマなどへの投資に携わる。現在、シーバイエス株式会社(旧ディバーシー株式会社)および名水美人ファクトリー株式会社(旧九州ジージーシー株式会社)の非常勤取締役。
- -コーチとして出身校の野球部を強くしたことが原体験に
- -日本人が運営する日本専用のファンドにこだわり
- -経験値をフルに生かして、もやしメーカーの事業継承案件に挑む
- -会社の成長とともに自らも一つ上のステージへ
それと、カーライルではジュニアの立場だとしても局面局面で判断を求められます。例えばデューデリジェンスというのは、お金と時間さえあれば誰でも100%調べきることが出来ますが、現実には限られた時間とリソースで行う場合がほとんどです。その中で「ここはリスクがありそうだから、他を捨てても慎重に調べよう」といったことを判断し、その部分最適がディール全体を考えた時にも最適かどうかまで自分の頭で考えていかなければなりません。弁護士さんがこう言っています、ではなく、A案はこう、B案はこう、その上で自分はA案を取るべきだと思います、という提案をしていかなければいけない。自分で頑張って考えて、答えが出なかったら隣の人に聞いて、何とか食らいついていく。それは経験の有無ではなくて、最後はその人の責任感の問題なのだと思います。
もちろん、モデルを作るなど作業として覚えることはありますよ。でも所詮は四則計算ですし、本気ならば1日2日徹夜して苦しめば出来るようになります。むしろモデルが綺麗に出来ているかどうかよりも、売上を伸ばすためにどういう分解の仕方をするのが正しい切り口なのかとか、何がドライバで事業が動いているのかとか、そういった分析能力の方が重要です。金融バックグラウンドでない方は不安に思うかもしれませんが、BS、PL、キャッシュフローさえ理解していれば、スキル面では十分キャッチアップできると思います。

この案件、そもそもは事業承継案件でした。九州ジージーシーは1990年に設立された会社で、いいもやしを作っていたので西日本では50~60%のシェアを占めるようになっていました。そんな多忙な日々の中で社長はふと気づきました。自分がいつのまにか65歳になっていて、しかもこれまで非常にワンマンで携帯電話1本で担当者に指示を出す仕事の仕方をしてきたので、今後の成長戦略を実行したくても、それを永続的に支える組織経営基盤がない、ということに。そういった状況下で社長にお会いできた我々は、タイミングが良かったのでしょう。しっかりと経営基盤体制を整備し10年後にはグローバルでナンバー1のアグリテックカンパニーになりましょう、というご提案をさせていただき、社長に我々の資本を受け入れていただきました。
投資後のバリューアップですが、それまではほとんど会議すらしたことがなかった会社でしたので、まずは組織を整備して経営陣の各々の責任を明確化し、販売データ等のKPIと財務数値の見える化を行い、それを共有する経営会議を行うようにしました。それからPOS情報などの分析から次の施策を考えていくというPDCAサイクルを作り、営業支援ツールを導入してリアルタイムに営業指導を行う体制を整え、実績のあるマーケターを東京から採用してきてマーケティングと商品開発の強化を行いました。ここまででお分かりのように、我々が実行した打ち手というのは、実はいたって普通のことばかりです。ただし、それをスピード感を持って実行するということが、ふつうの企業では意外に難しいことなんです。投資から1年ほど経った現在、会社はかなり強くなってきています。
理由は2つあります。まずは非常にまじめな従業員の方々が、我々のような外部人材を煙たく思うのでなく「力のある人はどんどん会社に入れていこう、それが俺たちの武器になるんだから」という姿勢で受け入れてくださっていること。社長自ら積極的に外部人材をサポートし、その上でその専門性を活用しようとしてくれるのは素晴らしいと思います。
もうひとつは、まさに従業員の皆さんの心に火が着いたからです。毎年、管理職以上25名程度で経営合宿を行っているのですが、直近では戦略やマーケティングの基礎、“5 forces”や“Segmentation, Targeting, Positioning”といったビジネススクール的なナレッジ、さらに“Mission, Vision, Value”といったコンセプトを共有したうえで、それをもやし業界や自社に当てはめるとどうなるか、といったことをみんなで考えてもらいました。その後、5人一組でグループに分かれてもらって、先に学んだツールも活用しながら各々のグループを1つの会社と見立てて、Missionを含む中期経営計画を策定して発表し、株主だったらどのグループに投資したいか、従業員だったらどこで働きたいか、という視点で投票も行いました。
このような参加型の経営合宿によるソフト面での底上げというのは、短期的にはコスト増に見えるのですが、実は人の生産性やクリエイティビティ等の潜在能力を引き出す、やる気にさせるということが本当はもっとも重要であり、そのための共通言語の習得やトレーニングというのは将来の成長にとって非常に大事なものなのだと、最近実感しています。事実、そのおかげで以前は会議で社長が何か言ってもみんな黙っていたのですが、最近は「社長、それは違います。この数字を見るとスーパーではこういう状況になっているんです。なので、こうやらせてください」ということを、目を輝かせて発言する方が出てきたんですね。個人の心に火が着き、組織にも火がついて、チームのダイナミズムが変わってきた。その場面を目撃した時、うれしくて、本当に涙が出そうになりました。
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カーライル・グループ
世界35拠点に1600名以上の投資プロフェッショナルを擁する、世界最大級のオルタナティブ投資会社。日本のオフィスは2000年に開設され、これまでに製造業・金融サービス・消費財小売・ヘルスケアなど業種を問わず多くの企業へ投資を行っている。現在、日本では3号ファンドを運用中で、事業承継や大企業の非中核部門のカーブアウトへのニーズの高まりに積極的に対応している。
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