4月新卒採用者の早期離職に思うこと

2024-04-30 執筆者:佐藤 史子

新年度が始まって1カ月ですが、4月に入社をしたばかりの新入社員たちが次々に会社を辞めていて、ちょっとした社会現象のようにニュースになっています。
入社初日に、身だしなみに対する注意を受けて、入社式に出席できずにそのまま退職届を提出したり、労働者本人に代わって会社に退職の意思表示を代行する退職代行サービスに、今年の新卒入社組からの依頼が急増しているという現象が話題になっていて、一部の若者の特殊な行動として簡単に切り捨てられない、労使の新しい関係の一側面を垣間見るような思いがしています。

初日に辞めるのは極端なケースですが、大学卒業で入社後、3年以内に退職をした人の割合はおよそ32%と、実に3人に1人はいわゆる「早期離職」をしていることが分かります。
実際、当社にご相談をいただく方々の中でも、入社3年未満での第2新卒と言われる方々のご相談は確実に増えていて、ジョブマーケットの中でも活用すべきクライテリアとしての存在感を放っているように思います。

終身雇用制で育った人々から見ると、忍耐に欠けると言われてしまうようなこうした世代の方々ですが、私たちのような立場からお話していると、非常にしっかりした自己認識、価値観をお持ちであると感じます。
「やってみたけれど、やりたい仕事ではなかった」「ロールモデルになるような上司がいない」「仕事に意義、やりがいを感じない」など、表面的に聞いてしまうと、「もう少し頑張ってみては」となってしまうような離職理由の背景には、社会の大きな変化の中で醸造された個人の仕事観や人生観の変化が確実にあるように思うのです。
学生時代にインターンや起業などの課外活動で鍛えられ、SNSで大人の世界と早くから繋がって様々な価値観に触れる中で、自己実現や仕事を通じての幸福感について早い段階から考え抜いて、追及して来た結果、会社も組織も「自分の能力を活かすための場、自己実現するための器」として捉え、良い意味で活用していくというたくましさも感じます。
必然、それが叶わなければ、入社した会社に拘らずに自分の意志で次を探そう、となる訳です。
入社した会社や仕事ありきで無理に適応するのではなく、自分によりあった企業を働く側が選び、会社側もそういう人材を積極的に活用していくというあり方は、今後さらに加速されると思いますし、雇用環境を流動化させる合理的な現象でもあると思います。

もちろん、こうした考え方で切り捨ててしまっているチャンスや可能性が多々あるのも事実です。
自分が知っている情報や刹那的な良し悪しに基づいて退職してしまうと、本当は自分に向いていたり力を発揮できるはずの機会を気づかずに、逃してしまうリスクも生まれます。
希望していた仕事ではなかったけれど、トライしてみた結果、それがキャリアの幅を広げて後々の成功に繋がったりすることはよく起こります。
私たちはこうした部分も含めてご相談に乗りますし、目の前のご相談者の方がより広い視点を持って、ご自身のことをさらに深く考えていただけるようにご支援しています。
結果、転職をされるにしても現職に留まるにしても、候補者の方が長い目で見て、ご自身と会社、もっと広くは社会全体とのよりよい関係を築けるよう、日々伴走させていただきたいと思っています。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。