2010年 金融ジョブマーケット

2009-12-29 執筆者:小倉 基弘

09年の金融業界のジョブマーケットは大変厳しい1年でした。
7月には全体のジョブマーケットを見ても過去最高の失業率(5.6%)を記録し、03年の4月(5.5%の失業率)以来の最悪期でした。
特に金融業界は08年9月のリーマンショック以降、今年の6月までに外資系投資銀行のみで5,000名弱のリストラが行われ、ジョブマーケットに大量の人材が流入し、過去に例を見ないくらい金融ジョブマーケットの需給ギャップが悪化していたと思われます。
しかし、やっとですが、7月もしくは8月位に底入れをしたのかもしれません。失業率は7月の5.6%をピークに8月5.5%、9月5.3%、10月5.1%と改善傾向にあります(25日発表の11月の速報値は5.2%と0.1%上昇になってしまいましたが)。日経平均も3月10日に7,021円をつけたのを底に現在、10,500円前後まで回復してきています。
私たちも日常業務の中で、7月まではほとんど投資銀行、投資ファンド、大手日系金融機関から求人をいただくことはできなかったのですが、8月後半位より、まず外資系投資銀行の投資銀行部門から少しずつですがオーダーをいただけるようになりました。当初は1、2社だけでしたが、現在は大手の投資銀行のほとんどから求人依頼がきており、それが日系金融機関にも広がってきています。
投資ファンドもリーマンショック以来、今年の9月まではほとんど投資案件そのものもなく、厳しい状況でしたが、9月以降の4ヶ月でアント・キャピタル・パートナーズによるバリオセキュア・ネットワークス(約60億円)、MULプリンシパル・インベストメンツによる「たらみ」(約80億円)、カーライルによりブロードリーフ(約200億円)、チムニー(約200億円)、ベインキャピタルによるベルシステム24(約1,000億円)等のバイアウト案件が複数成立するようになり、それと連動して求人数も少しずつですが多くなってきているようです。
類推をしても意味のないことかもしれませんが、直前の不況期から好況期への波動は01年後半のITバブル崩壊による上記の03年4月の底入れ(失業率5.5%、日経平均7,607円)から07年7月の天井(失業率3.8%、日経平均18,261円)が大きなトレンドになっていましたが、今回、もし09年7月位に底入れをしていたとした場合、今後、4年から5年程度の上昇トレンドにゆっくりではあるかもしれませんが入ってくるものと思われます。
来年が景気の大きな上昇トレンドの始まりになり、私たちにとっても今年より多くの方々の機会提供ができるよう強く願っています。

来る年が皆さんにとっても良い年になることを祈念しております。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。