時速1200キロメートル

2023-01-24 執筆者:小倉 基弘

昨年、私は還暦を迎えてしまいました。
20代前半に社会人となり40年弱が過ぎたことになります。
定年前後のビジネスパーソンの多くがそうなのかもしれませんが、過去を振り返ればこの40年弱という時間があっという間に過ぎてしまった感があります。
実際にはいろいろな事、新卒での就職活動、就職、(証券会社だったので)ノルマをこなすべく日々大変であった事、独立起業、起業はしたが売上がなかなか上がらず苦労した事、結婚、子供の誕生、再度起業、家の購入、リーマンショックで赤字になった事等ありましたが、今の時点から振り返ると非常に短い時間であったと感じています。

表題の時速1200キロメートルというのは地球の(赤道上の)自転速度です。どのくらいのスピードなのかイメージできませんが、ジャンボジェット機(ボーイング747)が時速900キロメートルなので、それ以上の速度で回転している地球上で人間は生活をしていることになります(ちなみに地球の公転速度は更に速く時速11万キロメートルでまったく想像がつきません)。ただ、この年齢になるとこういったスピードで回転、移動している地球上で生活しているのがなんとなく実感できてきています。そして残りの人生もこの速度のまま過ぎてしまうと考えると、息が詰まるような思いがします。

結局のところ人生はそれほど長くはなく、せいぜい長生きをしても100年程度、そのうち本当に健康な状態は80年ほどで、社会に出るのが20歳前後であればその間の60年をどう充実させて生きていくかは、人類が文明を創り始めてからの命題であったのではないかと思います。

人生の多くの時間を占める仕事、それがビジネスであっても、芸術、芸能、スポーツであっても、常にやりがいを持って取り組めるよう早い時期から自身のキャリアデザインについて真剣に考えておくことは大切です。現在の20代、30代の方々は60歳という年齢は遠い将来に感じられると思いますが、人間の寿命から考えるととても短い期間であると思います。

今の日本では安定を求めて大企業に入社する方も多いようですが、現在の制度を見る限り大企業に所属していることが安定に繋がるとはとても思えません。大企業に入りゼネラリスト的なスキル、その企業でしか通用しない人間関係をながい時間をかけて作ってもキャリアの劣化に繋がり、数パーセントの確率で役員にでもならない限り50代以降、大多数の人は仕事のやりがい及び収入が下降していく可能性が高いのです。本質的な安定は情熱をもってできる分野で専門性を高め、自己の能力を伸ばし、年齢に関係なく高いパフォーマンスを出せるようにしておくことです。

先日、新卒で入社した証券会社の同期と食事をする機会がありました。同期の友人は60歳で定年になり現在は雇用延長制度で働いているようですが、年収を聞いたところ入社2~3年目ぐらいの水準とのことで大変驚きました。それが大企業の人事制度の実態なのでしょう。この制度自体が現在の日本人の平均寿命84,62才(2020年)を考慮した時に相応しいものかは疑問です。

誰にとっても人生は期限付きです。
これらの事実を正面から受け止めて20代、遅くとも30代には自身のキャリアデザインの方向性を熟考しておくことは、充実した人生を送るためにも必要ではないでしょうか。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。