リック

2021-12-13 執筆者:小倉 基弘

今回は弊社内のトリビアのような話なので、皆さんの転職活動に直接は参考にならないと思いますが、弊社のポリシーについて少しだけご理解いただけるかもしれないと考え、書かせていただくことにしました。

私が2002年にアンテロープを創業した時、弊社のデータベースは「リック」、共有ファイルサーバーは「カサブランカ」と名付けました。映画「カサブランカ」をご存じない方にとっては「何言ってんの?」ということになるでしょうが、実はこのネーミングの背景には「数あるエージェントの中でも、アンテロープだけは候補者(キャンディデート)の本当の志向を理解して、より良い機会を提供していこう」という意気込みがありました。

リックとはもちろん「カサブランカ」の主人公リック・ブレイン(ハンフリー・ボガート)のことです。彼は恋人イルザ・ラント(イングリッド・バーグマン)と、第二次世界大戦の混乱で離れ離れになり別れてしまいます。イルザはその後、ドイツ抵抗運動の指導者ヴィクトル・ラズロ(ポール・ヘンリード)と一緒になります。戦争の影が身近に迫る中、イルザはラズロとともに、リックがカサブランカで経営している酒場を偶然訪れます。再会したリックとイルザは互いの気持ちを確認しますが、最終的にリックは(イルザと人生を共にしたかったのだろうけれど)イルザにとってはラズロと一緒になるほうが幸せになると考え、2人がカサブランカを脱出する手助けをするのです(102分の映画を260文字でまとめました!)。

創業時の社員は私ともうひとりの2名だけでしたが、まだ若かった私たちは「愛する人を失っても大義を守ろうとしたリックがかっこいい」ということで、手数料の誘惑があってもキャンディデートの人生を考えて一番良い道を提供していこう、と映画のストーリーを仕事上のポリシーと重ねていました(カサブランカとは随分レベルが違う話ですみません)。

あれから約20年が経ちましたが、社内のメンバーは相変わらずデータベースを「リック」、サーバーを「カサブランカ」と呼んでくれています。アンテロープの「向上心を持つプロフェッショナルに対して長期的なスタンスで自己実現のための機会提供を行い、人々の人生を充実したものにする」というミッションは、表現こそ当時から多少変化しましたが「自己実現のための機会提供をする」「人々の人生を充実したものにする」ためにこの仕事をしており、自分たちの都合をキャンディデートに押し付けない、キャンディデートにとってより良い道を選択してもらう、といった考えは今も変わっていません。

社内で「あれリックに登録した?」とか「そのファイルはカサブランカに入っているよ」という会話を耳にするたび、起業した時の志がよみがえるのです。

代表取締役小倉 基弘 / Motohiro Ogura
【経歴】
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て90年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンド及びコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。07年アンテロープの共同創業者の増井慎二郎氏とオープンワーク(株)(旧(株)ヴォーカーズ)設立にも関わる。

【担当領域/実績】
専門は投資銀行、PE投資ファンド、投資先企業マネジメントポジション、不動産ファンド。