外資系不動産ファンドが気になる方へ

2025-04-01 執筆者:岡田 真奈

弊社にご登録いただいた方から、不動産ファンド、中でも特に外資系の不動産ファンドが気になるという声はよくお聞きします。
そこで今回は、外資系不動産ファンドが採用したいと考える人材像について、少し詳しくご案内したいと思います。


◆そもそも外資系不動産ファンドとは?

その名の通り、海外の資本で設立され、海外に拠点をもつ不動産投資会社です。
日本に拠点を設けている外資系不動産ファンドには欧米系・アジア系(シンガポールや香港が中心)が多く、既に多くの社員が在籍しているところもあれば、設立されたばかりで在籍者はMD(マネージングディレクター)のみ、あるいはまだメンバーは一人も決まっていないけれど拠点だけができた状態など、ファンドによってその事情はさまざまです。
また、投資家も海外投資家メイン・国内投資家メイン・その両方などのパターンがあります。


◆外資系不動産ファンドの主な投資手法

私募ファンド・私募リート・上場リート(日本法人を設け、そこが上場リートを運用しています)という主に3つの投資タイプがあります。
そのうち私募ファンドについては、投資手法に以下の4種類があります。

1)コアファンド:長期安定的な賃料収入によるインカムリターンを得ることを目指す手法。リスクを下げるためにローン借入額を少なくし、投資家からの出資金での投資額が多いことも特徴。

2)コアプラスファンド:インカムリターンを得ることを基本としつつ、賃料を上げるなど、コアよりも少し高めのリターンを得ることを目的とする。投資期間は長め。

3)バリューアッドファンド:物件のバリューアップを行い物件の価値を上げ、インカムリターンだけではなくキャピタルリターンを得ることを目指す。

4)オポチュニスティックファンド(オポチュニティファンド):安く買い、高く売ることを実践し、キャピタルリターンを狙う手法。リターンを高めるために、投資額のうちローンの借り入れ割合を高めにすることが多いのも特徴で、投資の保有期間も短め(場合によっては数カ月で売却することも)。

また、不動産の現物のみに投資をするファンドもあれば、不動産事業を行っている企業自体に投資をするファンドもある、というように投資対象も様々ですので、各企業の特徴をつかむことが大切です。


◆外資系不動産ファンドが求める人材像

上記の投資手法のうち、オポに近い投資を行うファンドは不動産を金融資産の一つとみるため、不動産の物件寄りの経験よりも金融の経験が求められます。

<オポ投資に近いファンドで求められやすい経験>
・投資銀行でのM&Aのファイナンシャルアドバイザリーの経験(不動産案件に関わっていればなお良い)
・PEファンドでの企業・事業投資経験
・財務モデリングができること
・ビジネスレベルの英語力(読み・書き・会話)

一方で、コアに近い投資を行うファンドは、物件のバリューアップを行うことがあるため、より物件に近い経験が求められやすくなります(ただ、一概に投資銀行等での経験者がNGというわけではありません)。

<コア投資に近いファンドで求められやすい経験>
・他の不動産ファンドでの取得・期中運用の経験
・(取得業務の場合)信託銀行等での機関投資家向け不動産売買仲介業務経験(信託受益権の売買経験必須)
・金融機関での不動産ノンリコースローン業務経験
・英語力(読み・書き・会話)

英語力は、基本的に外資系不動産ファンドにおいては必須、と捉えておいてください。
選考においても、海外拠点のマネジメント層と英語面接が組まれることがありますし、ファンドによってはすべてのフローを英語で行うところもあります。ただし、日本拠点に既に多くの社員がいるファンドや、海外投資家の対応があまりないファンドにおいては、必ずしも英語力を必須要件にしていないところもあり、英語力がなくても入社されるケースもあります。
その上で、海外拠点のマネジメント層と英語でコミュニケーションができる方の方が入社後の昇給・昇格は早い、という話も内部の方にお聞きします。英語力を磨き続けることは必須になるでしょう。


◆外資系でなければならない理由

憧れベースでなんとなく外資、という方もいると思います。たしかに外資系不動産ファンドは年収の面でも魅力的で、たとえばベース1000万円に対し、賞与額がその50~100%(ファンドパフォーマンスが良いときはそれ以上の可能性も)が望めることもあります。
外資は、日系に比べて日本での採用人数が少ないこともあり、その分求める要件も高くなりますので、必然的に優秀な人材が集まっていることも事実です。刺激的な同僚と切磋琢磨し、海外拠点ともやりとりをして英語力も発揮できる環境です。
ただし、ここは外資が良いというだけのふわっとした理由で内定が得られるほど甘い世界ではありません。日系が良い/外資が良い、ではなく、自分は何を求めて転職をしたいのか、どんなファンドに行きたいのか、どんなアセットに投資をしたいのか、などの目的意識をしっかりと持ち、それが当てはまるファンドはどこなのか、という探し方をすることも大切です。

その結果が外資なのか、日系なのかは人それぞれですし、どちらがすごいなどといった単純なピラミッドの構図で語れる世界ではありません。

不動産ファンド業界への転職において外資も気になるという方、ざっくばらんにぜひご相談ください。目的や方向性を決めていくお手伝いをさせていただきます。

岡田 真奈 / Mana Okada
【経歴】
早稲田大学教育学部卒。新卒で三井住友銀行入行。個人富裕層および中小企業営業を経験。採用面接や人材開発にも携わる。その後野村證券にて証券セカンダリーセールスを経験。通算約13年間金融業界の業務を経験。自身がキャリアに悩んだ経験と、経営者の人材に関する悩みを目の当たりにした経験から、個人のキャリア構築に貢献し、企業を人材面からチアアップしたいという思いでアンテロープに参画。

【担当領域/実績】
アセットマネジメント、不動産金融、銀行、証券会社セカンダリーなどを担当。金融機関における業務経験をもとに、金融機関勤務の方々のキャリア支援に強みを持つ。国家資格キャリアコンサルタント。