ベンチャーキャピタルへの転職で求められる人物像
ベンチャーキャピタリストの主な業務は、ソーシング、デューデリジェンス、投資実行、バリューアップ、エグジットの5つになります。スタートアップへの投資からIPOまで、5~7年程度の付き合いが必要となるため、起業家や、共同投資をしている他社のキャピタリストとの信頼関係構築は必須です。また、投資を実行しても数年以上結果が見えてこないケースもあるため、忍耐力も必要になってきます。キャピタリストとして、ネットワーク力、高度なコミュニケーション力、ファイナンス力、経営・マネジメント力など、ビジネスパーソンとしての総合力が求められます。
ネットワーク力
未公開企業が主な投資対象となりますので、いかにすぐれた企業=ビジネスアイデアor技術、経営者に早い段階でアクセスし、企業側から出資者として選んでいただけるかが重要になります。故に、ソーシングで重要となる起業家とのネットワーク構築力は必須のスキルです。起業家には20~40代が多く、その世代の起業家とのつながりを地道に構築したり、起業家をつなぐコミュニティイベントを開催したりと、地道な活動が求められます。
同時に、ソーシングでは他社VCのキャピタリストの横のつながりも重要です。これはVC業界特有ですが、競合他社=ライバルという概念はあまりありません。それは、設立間もないスタートアップに資金を供給する際に、リスクヘッジする意味で他のVCと共同投資を行うからです。リスクを分散させるために共同投資を行いますが、そのフェーズ毎にリード投資をする(もっとも多くの株式シェアを取る)VCと、マイナー投資のVCに分かれます。自分が主担当でリード出資をしている場合、スタートアップが成長し、次のフェーズでの資金調達が必要になると、自身のキャピタリスト間のネットワークを使ってファイナンス支援を行います。そのような背景もあり、キャピタリストはライバルというよりは仲間のような感覚で他のキャピタリストと良好なネットワークを築いています。
コミュニケーション力
一言でコミュニケーション力といっても広義になりますが、高度なコミュニケーション力は必須です。自身の同年代だけではなく、±10~20歳のステークホルダーと良好なコミュニケーションをとれることは、業務を遂行するために非常に重要です。また、リード投資となれば、投資先の経営者と二人三脚で経営を進めていくため、経営に関するアドバイスだけではなく、起業家を支え、目的に向かって導くコミュニケーション力が求められます。
また、スタートアップは30人の壁、50人の壁、100人の壁と言われるように、組織が拡大するにあたり必ず何かしらの問題に直面します。起業家から相談を受けた際に適切なタイミングで適切なアドバイスをできるか、問題解決のための人を紹介できるかといった起業家に寄り添うサポートが必要です。スタートアップは成功している時間よりも、うまくいかない時間のほうが圧倒的に長いのが普通です。その際に、投資先の経営支援をするにあたり、どんなときも明るく、前向きにモチベートし起業家を支えることのできる人間的な懐の大きさは非常に大事な要素になってきます。
ファイナンス力
PEと異なり、財務モデリングのスキルを面接時に求められることはありません。未経験でも、ソーシング時に必要な財務諸表を見ることさえできれば、最低のラインはクリアしていると考えるVCもあります。ただ、入社後のOJTを通して、資本政策をはじめとするファイナンスの知識を高めていくことは必須になってきます。特に、近年のスタートアップのCFOには投資銀行出身やPE出身の方々が増え、調達額の大型化が見られます。高度なファイナンス力を持つスタートアップ側のCFOと良好な関係を築きつつ、高度な交渉をするには、IPOまでのファイナンスだけでなく、そのスタートアップが上場後株式市場における信用力を高めるためにどのような投資家にレイター期に株主になってもらうべきかといった、総合的なファイナンス力・財務戦略構築力を高めていくことが必要になります。そのため、これまではコンサルティングファーム出身者、起業家経験者を好んで採用してきたVCが、投資銀行出身者を対象に選考する、といった事例も一部で見られます。
経営・マネジメント力
自身が経営者になるわけではありませんが、スタートアップに対してさまざまな形で経営支援をするにあたり、特にリード投資家としてスタートアップに出資をしている場合は、経営力や組織開発の部分でのアドバイスを与える機会が多くなります。決断力があること、複雑に絡み合った物事の現状認識を解きほぐし、課題を見つけ、施策を提案できること。また、人を巻き込み、目の前の壁を突破していけることといった優れた起業家に求められる上記要素は経営支援を行うキャピタリストにも求められるでしょう。
最後に
VCのビジネスモデルは、企業への投資実行→バリューアップ→エグジット→キャピタルゲインの取得となり、本質的には起業家として自らその経験を有した人材が最適な人物像になります。ただ、起業家とキャピタリストの資質は似ているようで異なる部分もあり、実際にForbes誌で毎年キャピタリストとして「Midas List」にランキングされる方は、起業家、エンジニア、投資銀行、戦略コンサル出身の方々が各25%前後でほぼ同率です。日本ではIBD出身者や戦略コンサル、起業家、事業会社で新規事業を立ち上げた方が多い傾向にあります。
また、直近ではコンピューターサイエンス(AI、IoT)、ロボティクス、バイオ、化学、素材の専門的な知見があり、事業会社で開発経験を持つ方を求めるVCも増えてきました。その背景には、投資先企業へ深く入り経営支援を行うため、その企業のビジネスモデルに関する高度な専門知識を有する人材ニーズの高まりがあります。特に大学発スタートアップは大学の研究室と共同研究しながらそれをビジネス化していくケースがあるため、その研究室の方と技術や特許についてディスカッションができるだけの素養が求められます。
優れたキャピタリストと優れた起業家は、素質に共通するものがあります。加えて、企業のバリューアップだけではなく、ファンドという期限を伴ったビジネスモデルにより投資家としての素質が必要になってきます。
いかに優れた技術を見つけたとしても、それが「数年後に社会的にも認知が広まり、マネタイズしていけるものなのか」といった視点は必須です。例えば、近年でこそAIを如何にビジネスに組み込むかといったことが一般に認識されつつありIPOまで至る企業がでてきましたが、AIに関する投資のブームはこの20年間の間に2回ありました。ただ、いずれも事業のスケールアップができずIPOまで持っていくことはできませんでした。最先端の技術を見ていくことは大事ではありますが、現在から数年先までの時流を見る視点はキャピタリストにとって非常に大事なものとなります。
さらに、エグジットの時期の景気もキャピタルゲインの増減に大きく関わってきます。現在のマクロ経済を把握すると同時に数年先の経済動向を予測し大局的な景気の流れを見ること、加えるなら地政学的なリスクも考慮に入れながら投資を行っていくことは、活躍するキャピタリストに求められる大事な素養となるでしょう。
ベンチャーキャピタル(VC)への転職
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監修:アンテロープキャリアコンサルティング この記事は、アンテロープキャリアコンサルティング株式会社が監修しています。 コンサル業界・金融業界への転職に役立つ情報を発信しています。 |