才能と呼べる個人差

2017-11-29 執筆者:佐藤 史子

すっかり寒くなってしまいました。今年もあっという間に、残すところあと1カ月ですね。

私はマラソンが趣味で、年に数回フルマラソンを走っています。ターゲットになる大会でタイムを出したい時は、大会の3カ月ぐらい前から練習量を増やして、長距離走やスピード練習と色々な種類の練習を組み合わせて、走力を上げるべく試行錯誤を繰り返しています。

この間、ランナー用のサイトを見ていたら、結果を出すための心構えとして「才能」という名の「個人差」に気づくことが大事、と解説してあり、非常に腹落ちしたことがありました。すなわち、練習の仕方ひとつとっても、本当に結果を出したいなら速いランナーのやっていることをそのままマネをしたり、同じ練習をするのではなく、自分がどういう才能を持って生まれたのか、どのように練習をつんでいけば実力を今以上に伸ばしていけるのかを真剣に考えることが大切だというのです。現在の自分の状態を見直し、冷静に身体と心の特性を理解した上で、自分に必要なトレーニングや練習法を見極めることの大切さについて述べてありました。

周りを見ていても、確かに結果を出しているランナーは自分のことをよく知っています。故障しやすさ、疲労からの回復の早さ、スピードがあるけどスタミナがないタイプなのかその逆か、などなど自分の強みも弱みも冷静に理解して、自分の身体に合った練習をしています。そしてうまく強みを伸ばして良い結果を出しています。

この「才能」と呼べる個人差に気がつくこと、それを冷静に受け入れられることは、転職活動やキャリア形成で成功したい方にも同様に大切なことであると思います。

転職活動で成功される方は、ご自分のことをよくご存知です。これまで積み上げてきた経験やご自身の武器が何なのか、不足していることが何かはもちろん、性格上の特徴や自分の力を発揮しやすいのはどのような職場環境でどのような役割かなど、非常に冷静に分析されています。世間一般で言われている良い会社、ブランドのある会社で働くことが、その人個人にとって良いことであるとは限らない、ということをよく知っています。そして「どういうチームに入れば自分の強みが活きて、活躍の余地があるのか」「足りない経験値を新しい職場で補いながら、その間どうやって自分のバリューを発揮し、評価を得られるのか」を良い意味でしっかり計算に入れています。その上で、相手を知るための情報収集のチャネルとして、私たちエージェントをうまく活用されています。

逆に自分にとっての良い会社かどうかではなく、周りの評価で転職先を決めたり、自身の個性や能力に合わない転職をしてしまうのは、マラソンの初心者がいきなりフルマラソンで大記録を狙おうとするのと同じ。せっかく努力をしても結果につながらない、というもったいないことになってしまいます。

才能、と呼べる個性にご自身だけで気がついたり受け入れたりするのは、結構大変な作業です。なりたい自分の姿と現実の自分の姿には、ギャップがある場合がほとんどだからです。私たちエージェントの役割は、候補者の方一人ひとりがご自身を知り、また向かう相手である転職先のことを知るためのサポーターです。キャリア形成という大きなレースの舞台で、それぞれの方がご自身の実力を最大限に発揮できる環境を見極めて、そこで気持ちよく走り続けることができるよう、私たちも伴走させていただきたいと思っています。

佐藤 史子 / Fumiko Sato
【経歴】
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。新卒で大手新聞社に入社し、取材記者として勤務。その後大手総合人材サービス会社を経て2008年より現職。人材業界でのキャリアは通算15年以上にわたる。

【担当領域/実績】
コンサルティング業界担当。毎年年間200名以上の候補者の転職やキャリア形成をサポート。外資系戦略コンサルティングファーム、総合系ファーム、会計系財務アドバイザリーファームを中心に業界でのネットワークを広く持ち、現役コンサルタントの方々との日々のコンタクトを通じて業界の生の情報に触れ、コンサルティング業界の最新動向やキャリア形成に関する知見を磨く。これらをソースにした的確な転職アドバイスに強み。大手ファームへの転職支援はもちろん、ポストコンサルの方々のファンドや事業会社のコアポジションへの転職支援実績も多数。