PEファンドからの転職、PE後のキャリアについて

2018-03-28 執筆者:加藤 浩

これまで数多くのPE(プライベートエクイティ)ファンドを目指す方々にお会いし、その方々のPEファンドへの転職をサポートしてきました。そのような中「PEファンドの後のキャリアってどうなるのか?」という相談をいただくことが多いので、ここで最新の状況も踏まえてまとめておければと思います。

結論から申しますと、

  • 「他のPEファンド(特に立ち上げフェーズ)へ行く」

  • 「大手事業会社の経営企画(投資・M&A)部門へ転職する」

  • 「ベンチャー~中堅企業のマネジメント(CFOほか)へ転職する」

  • 「投資先であった事業会社へそのままマネジメントとして転籍する」

  • 「(ある程度の資金をお持ちの方が)まったく新しいビジネスを立ち上げる」

  • 「(比較的若い方だと)コンサル、投資銀行などに戻る」等々


  • 要は、本当に様々です。PEファンドの仕事はよく総合格闘技なんて言われますが、ビジネス、ファイナンス、法律など経営に関わるあらゆることに精通していなければできない仕事なので、その後のキャリアの選択肢が広いわけです。

    一方で意外と少ないのが、日系PEのアソシエイトとして2~3年経験してから外資系のPEへ転職するというパターンです。コンサルや投資銀行の世界だと「日系から多少ディスカウントされても、(よりレベルの高い、より年収の高い)外資系へ」というパターンがあるのですが、PEの世界では“日系<外資”という感覚はそこまでないです。むしろ外資系PEにいた優秀な人材が、より自由度のある日系PEに転職するというパターンもあるくらいです。

    結局、例えばとあるファンドの「2号ファンド立ち上げ時に入社した」とすれば、その2号ファンドの運営期間の最後までいないと良い経験もできないし、キャリードインタレスト(運用報酬)ももらえなかったりするので、PEファンドを転々とするということにはあまり意味がないわけです。ただ、その2号ファンドの運用を終えたタイミング(3号ファンドへ移っていくタイミング)などで、他PEへ転職するという方はよくいらっしゃいます。この時も大手ファンドにいた方が独立系ファンドへ移る、立ち上げファンドのディレクターとして移る、というパターンの方が多いです。

    もしかすると読者の皆さんの中には、よりファンドサイズの大きい、いわゆる大手にキャリアをシフトしていくのが良いキャリアなのでは、と考える方もいらっしゃるかもしれません。ですが、現実にファンドにいる方々からすると、サイズの大小よりも、より自由度があるか、投資理念に共感できるか、キャリー分配が多いか、といった点に魅力を感じるかどうかが重要だったりするものなのです。

    ところで、少しずつですが確実に増えているのが、上記でも触れた事業会社への転職です。最近では、歴史がある日系のいわゆる大企業へ転身する例も増えてきました。無論、PEで働いている時よりも給与水準は下がってしまうのですが、皆さん様々な考えや使命感を持って転職されています。

    逆に言うと、これまでプロパー重視だった日本の大手老舗企業ですら、30代後半のPEファンド出身者を採用するというような時代になったわけです。それだけファンド出身者の実力が経済界で認知されてきたということです。

    PEファンド業界は日本ではまだ歴史の浅い業界ですが、今後は転職市場での認知もさらに上がり、さまざまなフィールドで「ポストPE人材」が益々活躍していくと思います。

    加藤 浩 / Hiroshi Kato
    【経歴】
    上智大学法学部卒。大手メディア企業にてアジアを中心とした海外営業に10年間従事。その後、コンサルティング会社で人事領域をフロントラインで広くカバーする中、数々の優秀な人材と接触。プロフェッショナルのキャリア構築をこの手で支援したいとの強い思いから、2007年にアンテロープへ参画。

    【担当領域/実績】
    専門はPE投資ファンド、M&Aアドバイザリー、戦略系・総合系・再生系コンサルティングファーム。PEファンド等、マネージングディレクタークラスと独自のネットワークがない限り応募をすることすら難しい業界にも、豊富なパイプラインを持つ。情報提供はもちろん、コンサルファームのケース面接対策はじめ、キャンディデートを文字通りハンズオンで支援することにより、これまで経営トップから若手人材まで数百名の方々の転職を成功に導いてきた。