総合系コンサルティングファームの仕事
総合系コンサルティングファームとは、その名の通りあらゆるインダストリーのクライアントに対して幅広いサービスを提供する、比較的規模の大きなファームを指します。もともと会計事務所を出自に持つファームが多いため、かつては会計系ファームとも呼ばれていましたが、資本関係の解消や合併再編が繰り返された現在では、その呼び名は一般的ではなくなっています。
総合系コンサルティングファームは扱う経営課題が多岐にわたるため、各領域別に専門組織を分けています。通常は金融、製造業、通信、エネルギー、公共機関といったインダストリーごとの“業界別チーム”と、戦略、会計、人事組織、SCMなど業界横断的な“機能別チーム”に大きく区別されます。
業界別チームに所属する方は、独特の業務プロセスや商慣習などその業界に対する広く深い知見を持ったうえで、クライアント企業とコミュニケーションをとっていきます。相手は責任ある立場の方である事が多く、知識だけではなく高度なヒューマンスキルも求められるため、一般的にマネージャークラス以上のメンバーが所属します。一方で、機能別チームには各機能における深い専門知識を持つメンバーが所属し、業界を問わず自らのエキスパティーズを発揮できる案件に関わっていきます。
プロジェクトは、一般的には業界別チームを中心に、そのテーマに応じた機能別チームのメンバーが集められプロジェクトチームを組成することになります。例えば、業界別チームがコンタクトしているクライアントが、新しい市場に打って出たいという場合、まず戦略チームのメンバーを中心に新市場参入戦略を作るプロジェクトが行われます。次にその戦略を実現するために、人事組織チームがどのような組織を作るかを、会計チームがその国の会計基準に合わせた会計システムを、SCMチームが生産ラインをどうするかを考えていきます。更にシステム導入チームが実際に使用するシステムを作り上げていきます。それぞれの各プロジェクト/フェーズにおいて、業界別チームのメンバーはその業界の専門家として関わっていきます。
総合系ファームの場合はこのように、プロジェクトのフェーズが変わるにつれて参画するメンバーも変わってきます。また、プロジェクトの規模もおのずと大きくなり、中には数年以上を費やして実行されるものもあります。
歴史的には、1970年代に会計事務所が会計業務のITシステム化を進めるコンサルティングを行ったのが、総合系コンサルティングの始まりと言われています。1980年代に入ってくると、システム化は会計分野にとどまらず、生産管理、在庫管理、販売管理、人事管理、などに広がり、コンサルティングの範囲も広がってきました。1990年代になるとERP(統合基幹業務システム)パッケージが登場し、その導入支援を手掛けることができた会計事務所系コンサルティングファームが一気に事業規模を拡大してきました。2002年にアメリカで「エンロン事件」が起こり、会計監査とコンサルティングを同一組織で行うことが不正を助長していたとの指摘があったことで、業界は再編へと進んでいきました。主な総合系ファームの変遷を整理すると以下の図のようになります。
扱うプロジェクトが大きい総合系ファームは、自身の組織規模も大きいのが特徴で、代表的な総合系ファームであるアクセンチュアは日本拠点だけで5000人規模、アビームコンサルティングが4000人、デロイトトーマツコンサルティング、PwCは1000人以上となっています。他のカテゴリーに属するファームが多くても数百人の陣容であることを考えると、総合系ファームが抱えるコンサルタントの人数が飛び抜けて多いことが分かると思います。
これまで総合系ファームが扱ってきたのは戦略立案、業務改革、システム導入に関わるコンサルティングなどが主でしたが、近年ではシステム運用保守を請け負うITアウトソーシング(ITO)、経理業務や給与計算業務、物流業務などを請け負うビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)などといった新しい領域まで事業領域を広げている傾向があります。その背景として、コンサルティング業務はプロジェクトとして受注をしますが、アウトソーシング業務は5年や10年といった単位で契約をするため、収益が安定するというメリットがあるものと考えられます。